「理学療法士の退職金はいくら?」
「退職金は職場にって違うの?」
「退職金が少ないみたいなんだけど…」
理学療法士の退職金は職場によって2000万以上の差がつくことも。
一人暮らしの高齢者なら、約10年分の生活ができる金額です。
だから、就職や転職のときには退職金をしっかり調べることが大切です。
この記事では理学療法士の退職金相場、退職金を確認する方法、退職金が少ない場合の対処法を解説しています。
この記事からわかること
- 理学療法士の退職金相場
- 退職金を確認する方法
- 退職金が少ない場合の対処法
退職金の制度と基本情報
退職金とは、従業員が一定の年数以上勤務した後に退職する際に会社から支払われる金銭のことです。
通常の給与や賞与とは別に支給されます。
退職金制度はその職場ごとに異なり、支給される金額も変わります。
ここでは退職金の制度と基本情報を解説します。
退職金の支給条件は3年が多い
退職金の支給条件は1年未満から支給される職場があったり、数年勤務が必要であったりと、職場によりさまざまです。
東京都産業労働局が公表している中小企業の賃金・退職金事情(令和4年版)によると自己都合退職にて退職一時金を受給するための最低勤続年数は、51.5%の企業が3年としています。
半数以上の企業が勤続3年を支給条件にしており、一般的には3年の勤続で退職金が支給される職場が多いと言えるでしょう。
退職金の受け取り方
退職金の受け取り方は「退職一時金」「企業年金」「退職一時金と企業年金の併用」に分けられます。
退職金の受け取り方
- 退職一時金
- 企業年金
- 退職一時金と企業年金の併用
退職一時金とは退職金を一括で受け取ることです。
大半の企業は退職一時金での支払いを基本としています。
企業年金とは、退職金を年金のように定額で定期的に支給されます。
公的年金と合わせて老後の生活資金にあてることができます。
退職金の計算方法
退職金の一般的な計算方法は、基本給に合せて計算する基本給連動方式が多く使われています。
退職時の基本給、勤続年数、退職理由を加味して計算する方式です。
退職金=基本給×勤続年数×退職事由係数
退職自由係数は会社都合退職より自己都合退職の方が低くなります。
また、基本給連動方式以外にも計算方法は複数あり、職場によっては他の計算方法を使用している場合もあります。
計算方式 | 計算方法 |
---|---|
定学方式 | 勤続年数のみに連動 |
基本給連動方式 | 基本給、勤続年数、退職理由で計算 |
別テーブル方式 | 役職や等級、勤続年数、退職理由で計算 |
ポイント制方式 | ポイントに応じて計算 |
退職金がない職場もある
退職金制度を設けることに法的な義務はないため、退職金制度がない職場もあります。
厚生労働省の2018年就労条件総合調査「退職給付(一時金・年金)の支援実態」によると、退職金制度のある職場の割合は80.5%でした。
職員数別では1000人以上の職場で92.3%、300〜999人で91.8%、100〜299人で84.9%、30〜99人で77.6%となっており、中小企業では導入率が低くなります。
非常に小規模な組織や、財務状況が厳しい企業では退職金制度が存在しないことも…
特にクリニックなどでは、退職金制度がないところも多いです。
退職金がもらえないところでは働きたくないな。
退職金制度の種類
退職金制度は主に「退職一時金」「退職金共済」「確定給付企業年金」「企業型確定拠出年金」という4つの種類があります。
制度名 | 受け取り方 | 特徴 |
---|---|---|
退職一時金 | 一時金 | 企業が退職金を支払う 金額は企業が決める |
退職金共済 | 一時金が多い | 共済が退職金を払う 金額は共済が決める |
確定給付企業年金 | 年金が基本 | 企業が外部に掛け金を積み立て、管理・運用する※ 金額は企業の運用実績によらず一定 ※従業員が一部負担するケースもある |
企業型確定拠出年金 | 年金が基本 | 企業と従業員が外部に掛け金を積み立て、管理・運用する※ 金額は従業員本人の運用実績によって変動 ※企業が全額負担するケースもある |
勤めている職場の退職金を確認する方法
勤めている職場の退職金は、就業規則で確認することが出来ます。
就業規則には、退職金の支給条件や計算方法が書かれています。
就業規則とは
就業規則とは職場ごとに作成される、雇用者と労働者の間の雇用に関するルールを定めたものです。
就業規則は職員が見やすいところに置くよう、法律で義務付けられています。
就業規則を見てもよく分からない場合は、人事部などの担当者に聞くと分かります。
しかし、退職が悟られることもあるため注意しましょう!
理学療法士の退職金相場
理学療法士の退職金相場は勤める職場により大きく変わります。
民間病院や施設で理学療法士として働く場合、退職金の支払いは施設の規模や財務状況に大きく影響されます。
退職金制度が充実している職場は、定年時退職金で2000万円を超えることもあります。
一方で小規模な病院や施設では退職金制度そのものがなく、退職金が0円という職場もあります。
理学療法士の定年時退職金は約342万
東京都産業労働局が公表している中小企業の賃金・退職金事情(令和4年版)によると、医療・福祉では大学卒業者の定年時退職金の平均は約342 万円です。
この金額は他の業界に比べると、圧倒的に少ない金額です。
30年以上勤めてこの金額が現実です。
この調査では、医療・福祉業界全体の平均であるため、他の職種も混ざっています。
勤続5年の退職金は約26万円
勤続年数 | 医療・福祉分野 | 全体 |
---|---|---|
3年 | 15.0 万円 | 23.8 万円 |
5年 | 26.3 万円 | 47.0 万円 |
10年 | 65.1 万円 | 112.1 万円 |
20年 | 151.4 万円 | 343.1 万円 |
30年 | 262.6 万円 | 653.6 万円 |
出典:中小企業の賃金・退職金事情(令和4年版)|東京都産業労働局
同じく、東京都産業労働局が公表している中小企業の賃金・退職金事情(令和4年版)によると、3年での自己都合退職は約15 万円、5年では約26 万円、10年で約65 万円となっています。
100〜299人規模の企業全体の平均退職金は、自己都合退職は3年で約26万円、5年で約49万円、10年で約123万円であり、医療・福祉分野と倍の差が見られます。
クリニックなどは退職金がないことも
クリニックなど小規模の組織では、退職金制度がない職場もあります。
経営者の考え方によるため一概には言えませんが、小規模になるほど退職金制度がない可能性が高いと考えておきましょう。
就職や転職の際には求人票や面接、エージェント型転職サイトなどで退職金の有無を確認しましょう。
理学療法士の平均退職金は一般企業よりも低い
業界 | 定年時退職金 |
---|---|
医療・福祉 | 約342 万円 |
産業全体 | 約1091 万円 |
公務員 | 約2356 万円 |
理学療法士の平均退職金は一般企業よりも低い傾向にあります。
東京都産業労働局が公表している中小企業の賃金・退職金事情(令和4年版)では、医療・福祉の大学卒業者の定年時退職金の平均は約342 万円と報告しています。
これに対し、調査産業全体での平均退職金は約1091 万円と報告しています。
また、総務省が公表している令和3年地方公務員給与の実態では、公務員の退職金は平均2,356 万円となっています。
医療・福祉の退職金は、一般平均より約1/3、公務員より約1/7程度低いのが現状です。
理学療法士の退職金が高い職域
ここでは退職金が高い職域を解説します。
退職金が高い職域
- 公務員
- 大規模病院
- 大学の教員
公務員
公務員理学療法士は退職金が高いです。
県立病院、市立病院に勤めている理学療法士は地方公務員となります。
そのため、退職金は「地方公務員法」に基づいて支給されます。
退職金の金額は自治体によって異なります。
総務省が公表している令和3年地方公務員給与の実態では、都道府県の一般職員で25年以上勤務の定年退職は、平均2,356 万円の退職金となっています。
自己都合退職を含めた平均は1,247 万円です。
>>公務員理学療法士についてはこちら「理学療法士が公務員として働くメリット!求人の探し方から注意点まで解説!」
大規模病院
大規模病院の理学療法士は退職金が高いです。
一般の企業でも規模が大きくなれば、退職金が充実するように、病院でも大規模な病院は退職金が良くなる傾向にあります。
大規模病院の中には公務員の支給額を参考にしているところもあります。
しかし、
大規模病院では病院ごとに支給額が決められているため、職場ごとにバラつきがあります。
必ずしも退職金が高いところばかりではないため、よく調べるようにしましょう。
大学の教員
大学の教員も退職金が高いです。
特に大学教授であれば、国立大学でも私立大学でも退職金は充実しています。
中には3000万円を超える場合もあるようです。
大学教授になるのは大変ですが、収入や退職金は充実しています。
退職金は転職すると損する?
「転職すると退職金が少なくなって損する」と言われることがありますが実際はどうなんでしょう?
一般的に退職金は勤務年数に比例して増加するため、同じ職場で長く働いていると大きな退職金を受け取ることができます。
転職を繰り返すと、新たな勤務先での勤務年数が短くなるため、退職金は減少する可能性があります。
昇給率や転職先での退職金もあるため一概には言えませんが、今の職場の定年時退職金を転職による年収アップで上回れるなら、損することは少ないでしょう。
反対に、退職金が高く設定されている職場では、辞めることで金銭的に損することがあるのも事実です。
退職金制度も良くて、年収も上がる転職がいいな!
退職金と年収を合わせた金額で=生涯年収で考えよう
現職の定年時退職金が350万円だとすると、転職によって年収が50万円上がった場合、7年勤務すれば前職の退職金分の収入を得たと考えられます。
50万円 × 7年 = 350万円
現職の退職金が低く、転職により大幅な年収アップが見込めるなら、損することは少ないでしょう。
しかし、公務員理学療法士であれば2000万を超えることもあるため、転職で年収が 50万上がったとしても、40年必要です。
50万円 × 40年 = 2000万円
退職金のない職場に転職したら、退職金分を稼ぐのは大変です。
退職金と転職との関係は複雑で、一概に「損する」とは言えません。退職金は通常、勤務年数に比例して増加するため、同じ職場で長く働いていると大きな退職金を受け取ることができます。
転職を繰り返すと、新たな勤務先での勤務年数が短くなるため、退職金は減少する可能性があります。
転職には金銭以外のメリットもある
転職には金銭以外にも、新たなスキルを習得したり、ライフスタイルに合った働き方ができたり、人間関係が改善できたりします。
これらのメリットが退職金の減少を上回ることもあります。
転職を考える際には、退職金や年収だけでなく、その他の要素も総合的に考慮すると良いでしょう。
転職するときに退職金制度を確認する方法
転職先の退職金制度は先に確認しておくのが大切です。
退職金は老後の生活設計に大きく影響を与えるため、事前に確認してから転職活動を行いましょう。
退職金制度の確認方法
- 求人票で確認する
- 見学や面接などで確認する
- 転職サイトを利用する
求人票で確認する
退職金制度がある職場では、ほとんどの場合求人票に記載されています。
福利厚生などの欄に「退職金」や「退職金制度あり」と書かれていることが多いです。
細かい計算方法や金額までは書いていないことが多いので、面接などで確認すると良いでしょう。
見学や面接などで確認する
面接や病院見学で福利厚生の一つとして確認してみるのも良いでしょう。
管理職または人事関係の職員であれば、細かい金額や計算方法まで把握している可能性が高いです。
退職金制度がない職場は、経済状況や職員に対する考え方がなんとなく分かるな…
>>理学療法士の施設見学はこちら「【理学療法士】施設見学のポイント!持ち物・質問からマナーまで解説!」
転職サイトを利用する
自分で調べる時間がない、自分では聞きづらいという方は転職エージェンを利用すると良いでしょう。
転職エージェントは担当のキャリアコンサルタントが求人情報の提供から、面接などの日程調整、条件交渉など代わりに行ってくれます。
聞きづらい質問なども、名前をふせて代わりに聞いてくれます。
これだけやってくれて、しかも無料です。
>>理学療法士の転職サイトはこちら「【2023年】理学療法士におすすめの人気転職サイトランキング19選【徹底比較】」
退職金が少ない場合の対処方法
退職金が予想よりも少ない場合、それを補うための対策が必要となります。
ここでは、その対処法の一部を紹介します。
退職金が少ないときの対処法
- 年収を上げて生涯年収を増やす
- 退職金が多い職場に転職する
- iDeCoを利用して定年後の資金を作る
- 老後も働けるように準備する
年収を上げて生涯年収を増やす
退職金が少ない場合、年収を上げることで生涯収入を増やしましょう。
基本給が上がれば退職金の金額も増えます。
資格を取得する、スキルを磨くなどして、昇給や昇格を目指しましょう。
また、大幅な年収アップを目指すなら転職も選択肢に入れましょう。
退職金が多い職場に転職する
退職金制度が充実している職場に転職するのもひとつの手です。
まだ年齢が若く、働く期間が長いのであれば転職先での退職金も期待できます。
そのような人は退職金が高い職場を探すのも良いでしょう。
>>理学療法士の転職方法についてはこちら「【理学療法士の転職方法】初心者でも成功する10の手順を徹底解説!」
iDeCoを利用して定年後の資金を作る
自分でも老後の備えをするためにiDeCo(個人型確定拠出年金)を利用しましょう。
iDeCoとは
iDeCo(個人型確定拠出年金)とは、公的年金(国民年金・厚生年金)とは別に給付を受けられる私的年金制度の一つです。
公的年金とは異なり、加入は任意で、加入の申込、掛金の拠出、掛金の運用の全てを自分で行い、掛金とその運用益との合計額をもとに給付を受け取ることができます。
iDeCoは掛け金が全額控除、運用益も非課税で再投資でき、受け取る時も大きな控除の対象となります。
老後も働けるように準備する
退職金の主な使い道は老後の生活になります。
そのため、退職金が少なければ定年後も収入が得られるようにすれば解決できます。
理学療法士としての仕事や理学療法士以外の仕事、自分での起業など選択肢は複数あります。
理学療法士以外の仕事をするなら、今から副業として行っておくのも良いでしょう。
理学療法士の定年後の働き方について詳しく知りたい方は「理学療法士は何歳まで働ける?定年後も働ける方法を解説!」で詳しく解説しています。
まとめ
この記事のまとめ
- 理学療法士の退職金は職場によって2000万円以上変わる
- 就職、転職のときは退職金を確認しよう
- 退職金が少ない場合は転職やiDeCoなどを検討しよう
理学療法士の退職金は職場によって異なり、2000万以上差が出ます。
一般的には公務員や大規模な病院・施設では一定の退職金が支払われる傾向にあります。
民間の中小病院や施設では、定年時退職金が約340万円であり、一般的な退職金より少ないのが現状です。
就職・転職するときは退職金制度を確認し、生涯年収を考えながら判断するのが良いでしょう。
最後までご覧いただき、ありがとうございました。
理学療法士の転職についてはこちらで解説しています。
よくある質問
理学療法士として3年働いた場合の退職金相場はどれくらいですか?
東京都産業労働局が公表している中小企業の賃金・退職金事情(令和4年版)によると、医療・福祉での大学卒業者で3年での自己都合退職時の退職金は15万円となっています。
そのため、中小規模の病院や施設では15万程度と考えられるでしょう。10年理学療法士として働いた場合の退職金はどれくらいですか?
東京都産業労働局が公表している中小企業の賃金・退職金事情(令和4年版)によると、医療・福祉での大学卒業者で10年での自己都合退職時の退職金は65.1万円となっています。
そのため、中小規模の病院や施設では65.1万程度と考えられるでしょう。理学療法士で20年働いた場合の退職金の相場はいくらぐらいですか?
東京都産業労働局が公表している中小企業の賃金・退職金事情(令和4年版)によると、医療・福祉での大学卒業者で20年での自己都合退職時の退職金は151.4万円となっています。
そのため、中小規模の病院や施設では151.4万程度と考えられるでしょう。