何も考えずに残業をし続けると自分の人生を無駄に浪費することも…
1日1時間の残業だと、1ヶ月20日間の勤務で20時間です。
20時間あれば子供とおにごっこを20回、友人とのちょっとした食事なら10回は行けます。
理学療法士は患者さんのためと思って、自分の時間を犠牲にする傾向にあります。
しかし、時間は人生そのもの。
自分の時間を大事にしましょう。
この記事からわかること
- 理学療法士の残業時間
- 残業が少ない職場
- 残業を減らす方法
残業とは?
就業時間を過ぎたら残業という認識がありますが、残業には2種類存在し、法定内残業と時間外労働(法定外残業)に分けられます。
どちらも残業代は支払われるべきですが、時間外労働は法律で上限時間や割増賃金が定められています。
勤務時間を超えたら全部同じ残業だと思っていたけど、違いがあるんだね。
所定労働時間と法定労働時間
残業を詳しく理解するには、まず所定労働時間と法定労働時間を知る必要があります。
法定内残業時と時間外労働(法定外残業)は、所定労働時間と法定労働時間により分けられるからです。
所定労働時間とは各企業の就業規則に定められている労働時間を指します。
一方、法定労働時間とは労働基準法で定められた労働時間で「一日8時間、週40時間まで」という上限が設けられています。
法定内残業と時間外労働の違い
法定内残業とは所定労働時間を超え、法定労働時間以内で働いた時間です。
法定労働時間以内で働いているため、割増賃金は発生しません。
一方、時間外労働とは法定労働時間を超えて働いた時間です。
労働基準法に基づく残業とは時間外労働のことであり、残業の上限が決められていて、割増賃金も発生します。
法律で定められている残業の時間
時間外労働は月45時間、年360時間が限度です。
これらの上限を守らずに残業時間を超過して働かせると法律違反となります。
また、臨時的な特別な事情があり、労使が合意する場合(特別条項)は以下の範囲内で時間外労働が可能です。
特別条項での時間外労働
- 時間外労働が年720時間以内
- 時間外労働と休日労働の合計が月100時間未満
- 時間外労働と休日労働の合計について、「2ヶ月平均」「3ヶ月平均」「4ヶ月平均」「5ヶ月平均」「6ヶ月平均」全て1月当たり80時間以内
- 時間外労働が月45時間を超えることができるのは、年6ヶ月が限度
残業時の割増賃金
種類 | 支払う条件 | 割増率 |
時間外 (時間外手当・残業手当) | 法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えたとき | 25%以上 |
時間外労働が限度時間(1ヶ月45時間・1年360時間等)を超えたとき | 25%以上 (※1) | |
時間外労働が1ヶ月60時間を超えたとき | 50%以上 | |
休日 (休日手当) | 法定休日に(週1日)に勤務させたとき | 35%以上 |
深夜 (深夜手当) | 22時から5時までの間に勤務させたとき | 25%以上 |
※1 25%を超える率とするよう努めることが必要です。
出典:しっかりマスター労働基準法 割増賃金編|東京労働局
時間外労働には割増賃金が発生します。
法定労働時間(1日8時間・週40時間)を超えたときは25%以上、時間外労働が限度時間(1ヶ月45時間、1年360時間等)を超えたときは25%以上、時間外労働が1ヶ月60時間を超えたときは50%以上の割増賃金となります。
また、深夜22時から5時までの間の勤務は35%、法定休日(週1日)の勤務では35%の割増賃金です。
みなし残業代(固定残業代)とは?
みなし残業手当とは、実際の労働時間にかかわらず、一定時間分の残業代が固定給のなかにあらかじめ含まれている残業代のことです。
例えば、「固定残業代として法定時間外10時間分の残業代を含む」というように設定されます。
この場合、10時間分の残業代が固定給として支払われます。
実際の残業時間が5時間でも10時間分の残業代が支払われるのが特徴です。
管理職の残業代
一般的には管理職は残業代が出ないという認識が多いでしょう。
実際は労働基準法における「管理監督者」であれば残業代は出ません。
「管理監督者」ではないが、役職についている場合は残業代が支給されるので注意しましょう。
管理監督者とは
労働基準法における管理監督者は「労働条件の決定その他労務管理について経営者と一体的な立場にある者」と定義されています。
管理監督者に当てはまるかどうかは、役職ではなく職務内容・責任と権限・勤務態様等の実態によって判断されます。
理学療法士の残業時間
理学療法士の平均残業時間は?
理学療法士は残業代が多いという声をよく聞きます。
超過実労働時間数(時間) | |
理学療法士 (作業療法士、言語聴覚士、視能訓練士含む) | 5 |
医師 | 18 |
薬剤師 | 9 |
看護師 | 6 |
診療放射線技師 | 9 |
臨床検査技師 | 11 |
出典:令和4年賃金構造基本統計調査|厚生労働省
厚生労働省が公表している令和4年賃金構造基本統計調査によると、理学療法士の超過日労働時間数は月で5時間となっています。
他の医療職種に比べると、残業時間は少なくなっています。
5時間?もっと多いと思うけど…
一概には言えませんが、理学療法士はサービス残業が非常に多い職業です。
その部分は反映されていない可能性はあります。
理学療法士はサービス残業が多い
理学療法士はサービス残業が多い職業です。
時代の流れに合わせて少しづつ改善されてはきましたが、未だにサービス残業が当たり前になっています。
単位が取れない仕事は残業代を請求できない職場も多く、書類や会議などはサービス残業となることが多いです。
また、学生指導や後輩指導なども当たり前のように賃金は発生せず、賃金が発生しない状態で遅くまで残っているのが現状です。
勉強会に関しては、任意という名の強制参加となっている場合も多く問題となっています。
一般労働者の平均残業時間
厚生労働省が公表している令和4年の毎月勤労統計調査では一般労働者の所定外労働時間を13.8時間でした。
医療・福祉産業だけでは7時間となっており、全体に比べ医療・福祉分野は残業が少なくなっています。
理学療法士の残業が多くなる理由
理学療法士の残業が多くなる理由を解説します。
残業が多くなる理由
- 一日の取得単位数が多い
- 書類業務が多い
- 勉強会や指導時間が業務時間に組み込まれていない
一日の取得単位数が多い
理学療法士が提供するサービスは20分1単位で請求します。
多くの職場では常勤であれば18単位前後のリハビリをすることが多いでしょう。
場所によっては一日21単位がノルマなんて話も聞きます。
仮に18単位だとすると
18単位 × 20分 = 360分(6時間)
この6時間はリハビリをしている時間なので他に、患者さんの送り迎え、カンファレンス、計画書、レセプト、転院連絡書、その他書類、委員会業務、後輩指導、学生指導、勉強会などがあります。
労働時間は8時間だから、これだけ終わらせるのは無理だ。
リハビリの時間が多いなか、リハビリ以外の時間が多いため、全体的に業務量が増え、残業が多くなります。
書類業務が多い
業務の中では書類業務が多いのが特徴です。
例えば計画書やレセプト、退院時の書類、転院連絡書、カンファレンスの記録、委員会やその他会議の議事録など日々の業務の中にたくさんの書類業務があります。
職場のデジタル化がどこまで進んでいるかで業務効率は変わってきますが、医療・介護分野は書類が多く、一定の時間がかかってしまいます。
勉強会や指導時間が業務時間に組み込まれていない
残業が多くなる傾向の一つに、勉強会や後輩・学生への指導時間があります。
業務時間外の勉強会は任意という名の強制参加となることが多く、サービス残業が当たり前となっているのが現状です。
後輩や学生指導も業務時間内に終わることは難しく、残業が増えていきます。
理学療法士が残業を少なくする対処法
残業を少なくするための対策を紹介します。
業務には「自分の工夫で早く終わらせられる部分」と「自分ではどうにもできない部分」があります。
書類作成時間やその他の雑務などは、ある程度自分の工夫で早く終わらせられることがあります。
一方、多すぎる単位ノルマや業務は自分でコントロールできないため、職場との話し合いが必要になります。
業務を少なくする方法
- 書類作成をテンプレート化する
- 話し合い・カンファレンス・会議に時間をかけない
- 業務は相手に投げた状態にしておく
- 多すぎる単位ノルマや業務がある場合は職場と交渉する
- 業務の改善が難しければ転職も検討
書類作成をテンプレート化する
書類はなるべくテンプレート化しましょう。
理学療法士は書類が山のようにあります。
一つ一つ作っていては時間がいくらあっても足りません。
なるべくテンプレート化して、必要な部分を書き換えて使えるようにすれば時間を節約できます。
話し合い、カンファレンス、会議に時間をかけない
話し合い、カンファレンス、会議などはなるべく時間をかけないようにしましょう。
あらかじめ方向性は決めておき、確認をとるだけの状態にしておくと時間が少なくて済みます。
長考しそうな議題は無理に結論を出そうとせず、次回までの課題として早く切り上げるのも手です。
業務は相手に投げた状態にしておく
中堅になると色々な人と複数で行う業務も多くなります。
そのような場合は抱えている業務を自分で止めないようにしましょう。
自分が行うべき部分は終わらせ、常に他の人へ渡した状態にしておくのが良いでしょう。
自分で止めておくと常にそのことを管理してなければならず、余計な時間と労力が必要になります。
多すぎる単位ノルマや業務がある場合は職場と交渉する
多すぎる単位ノルマや業務のせいで残業が多くなっている場合は、職場と一体となって取り組まなければ解決しません。
職場にも前向きに取り組んでもらう必要があるため、難しくはなりますが、成功すれば大きく業務の改善が期待できます。
しかし、実際は職場が前向きに検討してくれることは稀でしょう。
言って改善するなら、最初からそのような状況になってないですね。
残業の改善が難しければ転職も検討
残業の改善が難しければ転職を検討しましょう。
特にサービス残業が当たり前の職場であれば尚更です。
自分の大切な時間を犠牲にし続けてしまうと、あっという間に人生は過ぎ去ってしまいます。
納得できない残業が続くのであれば、残業が少ない職場に転職しましょう。
>>理学療法士の転職方法についてはこちら「【理学療法士の転職方法】初心者でも成功する10の手順を徹底解説!」
残業が多い職場
残業が多い職場を紹介します。
残業が多い職場
- 急性期病院
- 回復期病院
- 訪問看護ステーション
急性期病院
急性期病院は残業が多い傾向にあります。
書類や会議などはもちろんのこと、急性期病院では新しい手術や治療法の勉強会などが頻回にあります。
また、実習生を受け入れている施設がほとんどであり、学生指導などにも時間をとられ、残業が多くなります。
大学病院などでは学会発表が義務付けられているところもあり、さらに残業は増えていきます。
回復期病院
回復期病院も残業が多い傾向にあります。
回復期病院ではリハビリテーションでの入院が主なものになります。
そのため、リハビリも収益を出すことが求められ、単位のノルマが厳しい職場も多いです。
リハビリ以外にも書類や会議、後輩や学生指導、勉強会などがあり、残業が多くなります。
訪問看護ステーション
訪問看護ステーションでは事業規模や職場により変わります。
訪問件数が多い職場では書類等が多くなり、残業が増える傾向にあります。
また、事業規模が小さかったり、立ち上げて間もない訪問看護ステーションでは仕事の割り振りが明確でなく、余分な仕事が増えて、残業が多くなります。
一方で、訪問件数が少ない訪問看護ステーションでは残業も少ないところが多いです。
残業が少ない職場
ここでは残業が少ない職場を紹介します。
残業が少ない職場
- デイケア・デイサービス
- 特養・老健・有料老人ホーム
デイケア・デイサービス
デイケアやデイサービスで働く理学療法士は残業が少ないです。
デイケアやデイサービスは利用者さんの送りの時間が決まっています。
また、書類業務も少ないため、管理職でなければ残業は非悪的少ないでしょう。
特養・老健・有料老人ホーム
特養・老健、有料老人ホームなども残業が少ない傾向にあります。
これらの施設の特徴は急に利用者さんが増えることが少なく、スケジュールが立てやすく、業務内で仕事を納めやすいです。
しかし、老健では学生指導や勉強会を積極的に行っている施設も多く、そのような職場では残業が増えることもあるため注意が必要です。
理学療法士が残業少なめの職場を探す方法
理学療法士が残業少なめの職場を探す方法を紹介します。
残業少なめの職場を探す方法
- 求人票で確認する
- 見学や施設で確認する
- 転職エージェントを利用する
求人票で確認する
求人票では「時間外労働時間」に関する項目で、残業の有無が記載されています。
時間外労働時間の項目には、早出・残業について詳しく書かれています。
記載は月ごとの平均時間が書いてあります。
「普段は定時で帰れるけど、月末だけ(または一時的に忙しいときだけ)多くの残業が発生する」職場もあります。
詳しくは見学や面接・転職エージェントなどに聞いてみましょう。
見学や面接で確認する
施設見学や面接で直接残業のことを聞くことができます。
特に施設見学では現場のスタッフと話せることもあるため、リアルな残業の話を聞けることもあります。
残業や早出の有無、残業内容、時間外の勉強会の有無などは確認しておくようにしましょう。
>>理学療法士の施設見学について知りたい方は「【質問・マナー・ポイント】理学療法士の施設見学」で詳しく解説しています。
>>理学療法士の面接について知りたい方は「【質問例と回答例】理学療法士の面接のポイントと対策!」で詳しく解説しています
転職エージェントを利用する
転職エージェントを利用すればキャリアコンサルタントを通して、残業のことを詳細に確認することができます。
あらかじめ伝えておけば、名前を伏せて確認してくれます。
転職エージェントは求人情報の提供から、面接の日程調整、条件交渉まで全て無料で行ってくれます。
もちろん残業などの気になることも頼めば確認してくれます。
最近では、転職先を探すなら必須のサービスになっています。
まとめ
この記事のまとめ
- 理学療法士はサービス残業が多い
- 残業は自分の努力で減らせる部分とそうでない部分がある
- 残業が改善しないようなら転職も検討
理学療法士は残業が多い仕事です。
職場によっては残業が全てサービス残業となっています。
自分の働き方や工夫で残業を減らす努力は必要だけど、限界はあります。
残業を改善したいのに改善できない、心身の調子が悪いという人は転職も検討しましょう。
特に、身体面や精神面に不調を認める場合は頑張り過ぎないで、なるべく早いうちに休職や転職などで環境を変えましょう。
職場は僕らの人生を保障してくれません。
最後までご覧いただきありがとうございました。